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【次号予告】第5次「精神医療」第19号

特集 森山公夫とその時代

[責任編集] 中島直+岡崎伸郎

 

 精神科医療・保健・福祉の改革運動は長い歴史を有する。それはそれだけこの国の状況の酷さが変わらないということでもあるが、新たな問題や新たな概念が生まれ、それに対してどう考えるか、どういう態度をとるかということが不断に問われ続けたということでもある。

 この過程で、運動の実践や理論的支柱となってきた方々が鬼籍に入った。当「精神医療」誌に関連の深かった人もいた。当誌は、これまで、3つの追悼号を世に出した。2000年10月に亡くなられた島成郎先生(2001年8月刊行、藤澤敏雄、中川善資責任編集)、2009年3月に亡くなられた藤澤敏雄先生(2010年5月刊行、森山公夫、広田伊蘇夫、佐原美智子、浅野弘毅責任編集)、2015年6月に亡くなられた松本雅彦先生(2016年1月刊行、岡崎伸郎、高岡健責任編集)である。

 森山公夫先生が、去る2月3日に亡くなられた。先生は長く当「精神医療」誌の編集委員を務め、最後の瞬間までその任にあった。この数年は編集会議への出席は少なかったが、時に触れ編集委員に檄を飛ばした。精神病理学の根本問題をテーマにした論文を執筆中であり完成したら当誌に掲載したいとのお話もあった。温厚な語り口の中にも変わらぬ熱い思いを感じさせた。その矢先の訃報であった。

 先生の活躍を一言でまとめることはできないが、あえて整理すると、東京大学精神科医師連合の中枢としての役割を果たし、日本精神神経学会の改革に携わり、陽和病院での実践家、精神病理学での理論者でもあった。

 編集委員会では「森山公夫とその時代」と題して先生の追悼号を出すことを決めた。これまでの追悼号もそうであったが、故人の過去の足跡や業績を偲ぶのみならず、残された我々が、現在に生かし、未来につなげるための出版である。凡人にありがちな、過去の栄光を笠に着て後進に高慢に振る舞うような姿勢が微塵もなく、最後まで前を見続けた先生の意志(あえて遺志と言わない)にも沿うものと考える。

《目次》【巻頭言】中島直/【遺稿】学会の告発―精神病理・精神療法学会―(精神医療第1号再掲)+歴史的転換と精神病理学の変動(未発表)/【追悼論文】森山泰+樋田精一+富田三樹生+屋宜盛秀+中山宏太郎+山下剛利+金杉和夫+熊谷彰人+横山晶一+瀬在友貴恵+柴山雅俊+岡崎伸郎+高岡健+栗田篤志+阿保順子/【編集後記】岡崎伸郎

                        


2025年10月20日刊行予定